整体的な視点
①あくびの抑制による生活
あくびが教育や仕事の現場など不謹慎や避難の対象となりますが、人間は生後20週ごろから子宮内であくびをしていますし、他の動物や魚類までも行っています。
この自然な不随意(非意識的)運動による生理現象を、社会通念で無理に止めてしまうことで、頭部や頸部、口周りの疲労や発達などに悪影響を及ぼしていると思います。
また過度のストレスで、あくびもでない状況もあります。
人はあくびをすることで血流循環が良くなり、酸素が脳に供給され脳の働きを活性化し覚醒状態になったり、逆に緊張状態を緩和してリラックスしたり調整する力があります。
ストレス時に脳の温度は上昇しますが、あくびをすると脳内温度が低下するようです。あくびは脳を約37度の最適温度に保つ調整的機能がある可能性があると言われています。
その他に副交感神経を優位したり、涙がでることで老廃物を流したり、ドライアイの抑制にもなります。
逆に生あくびと言って、極端な心身の疲労や頭部の打撲、低酸素血症や脳卒中などの危険が起こっている警告サインとしての意味もあります。頭部の打撲やぼんやりしたり、体調がおかしい時にあくびが多い場合は周囲や病院に相談する必要があります。
私はあくびによって大きく口を開き、あごの筋肉が刺激され、脳に刺激が与えられ血流や温度や神経などに影響し、頭部周辺の調整を促す安全弁的な役割だと思っています。口を開けることは口呼吸に近くなるので放熱のメリットがあると思いますし、生あくびも警告サイン以外に、自然脳内蘇生的観点も見落としてはならないと思います。
またあくびは口の内側から開きますので、唇だけ開く時よりも頸椎は動きますので、頸椎の伸びになっていると思います。口腔内の働きは頸椎も深く関係していると考えています。
あくび直後の瞬間の緩んだミーコ
野口晴哉先生もあくびをとても大切にしてきました。
あくびは、リラックス効果や口腔内やあごの歪みを整える効果が期待できると考えて、私は重要視し現代生活には要の部分だと思っています。
②下半身の低下
歯が不自然に動く要因は、姿勢の悪さや筋肉低下や生活スタイルだとは容易に想像できると思います。これらに関連したことで下半身の弱さが考えられます。下半身は体の大切な土台です。体の筋肉の70%を占めています。
例えば、下半身が弱い人は、立ち上がりの時に上半身などを使います。
分かりやすく説明しますと、座っている人の前にテーブルがあるとします。その人が立ち上がる時に上半身やテーブルを支えに使うことで、下半身の負荷を分散させているのです。テーブルがなくても分散して立ち上がることができますが、その際に無意識に歯を食いしばっている人もいるのです。単純な動作でも、その人にとっては歯を食いしばらなければならないほどの負担な動作ということになります。この場合は心理的ストレスというより身体的ストレスが適正だと思います。
また食いしばると言っても綺麗に食いしばるわけではなく、人間には多少のズレは自然であり、その人それぞれの癖を無意識に行って動作や生活をしています。
とくに足腰の弱い人ほど、何をやるにも歯を食いしばって生活していると言えると思います。歩いているだけでも歯を食いしばって歩く人もいます。
多くの人は無意識で動作を行って無自覚ですから、このようなことをしていることも自覚なく生活して、ある日突然、自覚症状がでてから気づくのが普通ではないでしょうか?
整体操法では、人それぞれの無意識運動習性や感受性の偏りを「体癖」と言って、12種類に原型を分類しています。「体癖」そのものは個性であり悪癖とはしていません。その体癖に伴って噛み癖もさまざまになると思います。
ただし体が丈夫で土台などが安定し、適正に機能していれば体に癖があっても、歯の歪みは少なく、比較的綺麗に発達していくと思います。
問題なのは、車や電車の発達、椅子の導入や履物や生活環境の変化や足腰を使わなくなるなどで、下半身を使用したり鍛える機会がなく弱くなったことです。弱い下半身では重力に逆らう力は期待できません。すぐに体を歪めてしまうことになります。
③子供が大声を出せない環境
子供の頃から大声を出し切らせない、出せない環境も考えられます。
大声や奇声を発することは、大人や現代の社会環境には不都合な部分があり、日本では保育園の騒音問題として苦情が多いようです。
しかし、大声や奇声は、子供の心身が発達していくうえでとても重要な側面があります。不快の感じる大人も、子供のころは同じように大声や奇声をあげて現在に至るのです。
私達人間は無意識に自然な発声練習をすることで、心肺機能や横隔膜や内臓などの発達を促し、呼吸も深くなり、口を内側から大きく開けるなどの体の成長を促したり、他に感情表現の練習や声の振動を全身に伝えて緊張を弛め、各家庭のストレスを緩和して精神状態を安定させたり、相手との間合いを覚えていくメリットもあります。
もし大声を出せない環境だと自分の心身の限界を知る尺度を知ることや自分を出していくことも難しいと思います。あまりに大声を出せない環境で過ごすと感情表現は抑圧傾向で不安定になり、ストレスに弱く、感情のコントロールが難しく爆発しやすくなると思います。
身体的には、顔の表情は制限されて口はつぐみやすくなり、声を出す時に唇は開いても、内側から口が開くことはあまりなく、声がこもるような話し方だったり、首は伸びず硬くなり、呼吸は浅く横隔膜は萎縮し、骨盤は緊張傾向が多いです。当然、口や顎の可動範囲のベースは狭くなります。このような状態で成長していくことになると、安静空隙は保ちづらく口腔内の発達にも影響がでると考えています。
私は子供たちや動物の声に耳を傾けています。それは声の出処で健康や精神状態を計る目安になるからです。
お腹から内側から声がでて泣いている子供は力がありますが、弱っているとたとえ声が大きくても、内側の力は弱く、肺や喉で泣いている子供もいます。嬉しい時と悲しい時では音色が違ってきます。
表面的にはうるさい音に聞こえるかもしれませんが、心を澄まして泣き声を聞き続けると、言語機能が発達途上の子供達の言葉にできない想いを聴くことができるかもしれません。